【カービィ考察】遥かな文明と魂と
【注意!】
この記事ではカービィシリーズのネタバレ、また後半では新作「星のカービィ スターアライズ」の重大なネタバレを扱います。後ほど同様の警告をしますので、同作プレイ中の方は警告以降を閲覧しないことをオススメします。
あっしは昔から「星のカービィ」シリーズが好きで、結構な作品をプレイしている。20周年のときは、カービィ20年の集大成ともいえる書籍も購入し、よりカービィ知識を深めていってるところでもある。
ほのぼのな雰囲気で知られるカービィシリーズではあるが、その中でも世界観上の「謎」がいくつか残されている。この記事で紹介しないことでは、「メタナイトの正体」などだろうか。メタナイトは仮面を取るとカービィそっくりの姿でゲーム内で描かれる。しかしその真実は未だハッキリしていない。
そして、今回この場で考察したいのは、タッチ!カービィ以降ラスボスの真の姿としてカービィの前に立ちふさがる「ソウル」系ボスとハルカンドラ文明の関連性についてである。
ハルカンドラ文明とは、カービィ世界に登場する超文明。星のカービィWiiでその存在が明らかになったが、同作で過去の作品に登場した不思議アイテムがハルカンドラ製であることが示唆された。
では、ソウル系ラスボスの登場するカービィシリーズを、ハルカンドラ製アイテムと結びつけながら紹介する。
タッチ!カービィ
「魔法の絵筆」というアイテムを主体に物語が進む。魔法の絵筆(プレイヤー)に導かれ、ボールになってしまったカービィが冒険を繰り広げる。
ラスボスである「ドロシア ソーサレス」を倒すと初のソウル系ラスボスである「ドロシアソウル」が姿を見せる。
絵の具をごちゃまぜにしたような姿に5つの目、そして大きく裂けた口。奇怪な叫び声をあげ、ただカービィを潰すだけのように「デッドリーサン」や「シューターカッター」などで攻撃してくる。
星のカービィ ウルトラスーパーデラックス
真格闘王への道の隠しラスボスとして、「マルクソウル」が登場する。
「銀河にねがいを」のモードでは、カービィがポップスターの月と太陽の喧嘩を止めてもらうため、銀河の果ての大彗星「ギャラクティックノヴァ」を星々を巡って呼び出した。
しかし全てを計算していた「マルク」は願い事を横取りし、ポップスターを我がものにしたいとノヴァに願った。ノヴァはポップスターのもとへ、マルクはノヴァからパワーを貰い変身。変身後の姿は異形の翼が生え、ノヴァのモチーフであるハート型があしらわれている。どちらともカービィが勿論撃破したのだが…。
カービィに撃破されて吹き飛ばされ、ノヴァに激突したあとのマルクが、ノヴァの破片からパワーを吸い取り、自我を喪失した状態で強大なパワーを得た姿こそがマルクソウルである。
目は完全にラリって、以前でも奇妙だったマルクの変身が輪をかけてエグいものになっており、一見しても謎の恐怖心を抱かせる。断末魔は子供たちのトラウマである。
星のカービィWii
ハルカンドラの初出。ここで登場するハルカンドラは荒廃しており、超文明の名残はあまり感じられない。
カービィを利用した「マホロア」はハルカンドラで四つ首の飛竜「ランディア」の守っていた「マスタークラウン」を奪い、銀河をも手にする力を我が手に収めた。最終的にマホロアはその力に振り回され、異形の姿に。カービィ達によって倒された。マスタークラウンも無論ハルカンドラ製である。
真格闘王への道では、隠しラスボスとして「マホロアソウル」が登場する。
ソウル化以前より体色が緑色を帯び、口のような所からは目玉がギョロりと覗いているところは、ダークマター族を想起させる。マホロアの意識はなく、マスタークラウンに支配されているという。
星のカービィトリプルデラックス
真格闘王への道のラスボスとして「セクトニアソウル」が登場する。
「クィン・セクトニア」は他人に寄生する
というダークマター族になんか似通った「あやつりの秘術」を得意とする一族であり、カービィの前に登場する女王蜂の姿ももともとのセクトニアの姿ではない。
セクトニアの支配していた浮遊大陸フロラルドの近くには「星のカービィ 鏡の大迷宮」で登場した「ディメンションミラー」が存在し、なんとこいつがセクトニアの部屋に部下の「タランザ」の献上したものとして置かれていたのである。ディメンションミラーの力で自らの美や支配への執着を増幅させ、最終的には「ワールドツリー」にまで寄生してポップスターをも支配しようとする。
カービィに敗れたツリー寄生セクトニアだったが、「きせきの実」の力で蘇り、美と支配に執着したゾンビのようにセクトニアソウルとしてカービィに襲いかかるのだった。
そして自らの体をワールドツリーから強引に切り離し、首から上の状態で襲いかかってくるのも執念を感じさせる。悲壮な骸、という表現が非常に似合う。
星のカービィ ロボボプラネット
ハルトマンカンパニーの社長「ハルトマン」は古代文明を紐解き、願いを叶えるというマシンを会社の技術力で復活させる試みを行った。しかしそこで最愛の娘を失くしてしまった。
その後、そのマシンの経営戦略に従い、娘に会うためカンパニーの繁栄に尽力していたが、マシン制御のために自らとマシンをデバイスで繋げていたところ、記憶と、そして人の心をも失ってしまった。
そのマシンこそ、ラスボス「星の夢」である。
カービィに敗北し激怒したハルトマンは、星の夢に乗り込んでカービィを排除しようとする。しかし制御装置を秘書スージーが奪い取ったため、不具合で星の夢とハルトマンが融合。ハルトマンを通じ生命体を知った星の夢は、「カンパニーの繁栄にか弱い生命は不要」と判断し、全生命体の排除を宣言した。
そして真格闘王への道では、ワープホールから呼び出した銀河最強の剣士「ギャラクティックナイト」に大きな傷を付けられたことで最終プログラム「Soul 0 System」が発動。「星の夢 Soul.OS」としてカービィを排除する。
この星の夢、第2形態からはカンパニーの母船「アクシスアークス」とマージし襲いかかるのだが、装甲が外れた第3形態ではなんとあのギャラクティックノヴァと酷似した姿を見せる。「古代文明」「願いを叶えるというマシン」の時点で察することも出来たが。
そしてSoul.OS戦では体内に入り込んで戦うことになるが、完全に「銀河にねがいを」でノヴァを止めた際の時と内部構造が一致。ハート型のコアの周りに装置が周回している。
ここまでを振り返ると、ソウル系ボスには何らかの不思議アイテムが関わっている(もしくは不思議アイテム自体である)ことがわかる。
ドロシアソウル……魔法の絵筆
マルクソウル……ギャラクティックノヴァ(の破片)
マホロアソウル……マスタークラウン
セクトニアソウル……ディメンションミラー
星の夢 Soul.OS……ギャラクティックノヴァ(の設計図?)
ここで浮かび上がってくるのは「ハルカンドラ文明のパワーは対象の『ソウル化』を誘発する」という仮説である。
上記の不思議アイテムの中でハルカンドラ文明のものと公式で示唆されているのは「ギャラクティックノヴァ」と「マスタークラウン」のみだが、「魔法の絵筆」や「ディメンションミラー」も仮説に従えばハルカンドラ製であることが推察できる。
特にディメンションミラーは「持ち主の願いを反映した平行世界『鏡の国』へと行ける」という能力も持っている。
ハルカンドラ自体はポップスターのある次元とは別次元にあり、それ故にハルカンドラ文明のものである「ローア」で次元を渡ることで辿り着くことが出来た。「次元」は英語で「ディメンション」である。
これからのカービィシリーズで不思議アイテムが登場したら、ラスボスとの関係を疑ってみるといい。もしかしたら、そのボスとのまさに魂を懸けた戦いが繰り広げられるかもしれない。
【警告!】
以降は「星のカービィ スターアライズ」の重大なネタバレを含んでいます。
こうかいしませんね?
……R…E…A……D…Y…………… ->
GO!->
星のカービィ スターアライズ
魔神官「ハイネス」が自らの崇める破壊の神を復活させる儀式をしていたが失敗、「ジャマハート」を破壊してしまい、それがカービィの冒険の始まりとなる。
遂にハイネスが儀式を行う「神降衛星エンデ」に到達したカービィ。三魔官も退け、ハイネスに挑むが、そこでハイネスは早口で次のようなことを叫ぶ。
銀河の果てに追いやられた魔力を司る我ら一族の悲願!
お前なぞにこの積年の思いの尊さがわかるのか?
いやわかるはずがない断じてないないないない!
かつて友であった奴らは我ら一族の力に恐れたのか、一族を皆ことごとく封印し銀河の果てヘと追いやった!
それでも飽きたらずかこの歴史からその存在さえ一辺も残らず消し去ろうとしたぁ!
我らの魔力があってこそ、奴らの科学と融和することで成し得た偉大な繁栄!
銀河の危機とも呼べるあのおぞましい悪夢を退けた我々に対しあまりの仕打ち!
これは誤解などでは決してないない!
我を狂っているなどと言った奴らよ聞こえているか!
銀河の最果てヘと我らを置き去りにして旅立ち今も恐らくどこかでのんきに暮らしておるお前らに最早未来などない
闇の物質を祀る我が一族の復権は近い
皆が偽りと決めつけおった伝説の書の通りについに我らは神の居られる器を手に入れたのだ
目覚めさせしものに染まり慈悲を下さるというその神の器は今満たされつつある
遂に偉大なる神が誕生する時が来たのだぁ
誕生するぞぅ誕生するぞぅ誕生するぞぉ~
はっぴぃーばーすで~い!新たなる歴史よ時代よぉ~!
はっぴぃーばーすで~い偉大なる、神よおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!
ピクシブ百科事典「ハイネス」より ハイネス (はいねす)とは【ピクシブ百科事典】
めちゃくちゃな重要情報をサラッと叫んでおりますね。
つまりハイネスの一族は魔力の一族で、そしてもうひとつ科学の一族がいた。
魔力の一族は闇の物質、ダークマター族を信仰。科学の一族は超文明を持っていたのだろう。……恐らくハルカンドラ文明のことか。
共に協力し悪夢を退けたようだ。「悪夢」というと「ナイトメアウィザード」が思い浮かぶが、比喩だとすれば何があったかは推測が難しい。ギャラクティックナイトが暴れたという可能性もあるかもしれない。
しかし科学の一族は魔力の一族を追いやったという。その復讐のため、破壊の神を呼び起こそうとしているのだろう。……ハイネスが信仰するのはダークマター族、ということは破壊の神も………。
そして復活したラスボスである破壊の神は「エンデ・ニル」。ゼルダの伝説にでも出てきそうな風貌をしている。
(画像は強化版)
ちなみに「エンデ」はドイツ語で「終わり」、「ニル」は「虚無」を表す。
もともとニルは完全な悪ではなく虚無なため、「呼び出したものに染まる」ようだ。しかしハイネスの儀式の段階で、ハイネスが自らを生贄として差し出したことで、その意思に染まって、混沌としているとみえる。
最終的にはニルの体内(?)で球体のコアとバトル。その姿は、見ようによってはカービィにも見えてしまう…?
戦いの後半になると口のような部分から目玉が覗き、周辺からひだが。完璧にダークマター族の姿をしている。
(画像はソウルオブニル)
結果ニルはカービィと星の盟友達によって見事消滅した。
モード「Theアルティメットチョイス」の最大レベルでコアの「ソウルオブニル」と相見えることが出来る。この時のソウルオブニルの色は灰色。GB版の白黒カービィを想起するのは早合点だろうか。
(目と口の様に見える)
ここまで読んだ諸氏は何か引っかかるものを覚えただろう。「あれ?こいつハルカンドラ関係なくない?」。はい。これがややこしいところです。
下の画像をご覧頂きたい。
…ソウルオブニルと戦う直前の強化版エンデ・ニルの形態なのだが…画像上方にある金色のあれ、紛れもなくマホロアの被っていたマスタークラウンである。また強化版に限らず、ニルの弱点はハート型。ハートのモチーフといえばギャラクティックノヴァであろう。そう、ハルカンドラのモチーフが、ふんだんに取り入れられている。
ファンサービスと言ってしまえばそれまでなのだが、真面目に考察してみる。
科学の一族と魔力の一族は袂を分けたはず。では何故魔力の一族側の神であるニルにこのようなモチーフがあしらわれているのだろうか。
ギャラクティックノヴァやマスタークラウンが制作された時期というのは不明であるが、少なくともマスタークラウンは魔力の一族との親交があったころのものだと思われる。
何故か。マスタークラウンに支配されたマホロアを思い出していただきたいが、口のような部分から目玉が覗いていた。先程のニルのコアでも言ったように「口から目玉」というのはダークマター族のよくある手法。あの「ゼロツー」も登場時は口かと思わせた部分が目玉であった。
虚無ゆえ、呼び出した主に染まるニル。召喚したハイネスの科学の一族への強力な憎悪。この強い科学の一族の記憶が、ニルを染めた結果のものと考えるのはどうだろうか。ハイネスの言によれば、彼も魔力と科学の一族が協力していた当時の人。もしかするとノヴァやマスタークラウンの製造に関わり、ダークマターの力、魔力を提供していたのかもしれない。そしてそれが今日のハルカンドラ文明の遺産群ではないか、と推測することが出来るだろう。
初めてカービィの考察記事を書かせていただいた。拙いところも多いだろう。特にスターアライズの部分は新作ゆえ正しい解釈を出来ている自信がない。そういった部分も含めて楽しんでいただければ幸いである。