紅烏の独り言

えいえんのにわか丸出しボーイ

メガネ屋に行こうとしたらパンを買った話

5月の半ば頃、メガネデビューをした。

 


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主にスマホという天使のような悪魔のような機械が原因なのだが、視力が落ちてきた。幼稚園の頃からゲームに親しんでいて、じいちゃんの家に行った時には(じいちゃんの話がこのブログのバックナンバーにあります)、それこそアホみたいにゲームをやってた(DSとか)。それでも中学生まで視力はほとんど落ちなかったので、「あ、俺ってそういう体質なんだな」ってずーっと思っていた。しかし、スマホはそんな軟弱な考え方は一蹴し、俺の視力をどんどんどんどん下げていったのである(こう書くと全部スマホが悪いように聞こえるが、スマホをずっと見ていた自分が確実に悪い)。

 

現在の視力は0.6ほど。教室でいえば、後ろの方の席からは黒板が大分見えづらいといったぐらいである。日常生活にはさほど支障はなく、毎日の通学の自転車を漕ぐのも訳ない。強いていえば遠くの人の顔がいまいち分かりづらいぐらいである(支障あるじゃん)。

 

メガネを買った時の話に戻る。まずはフレームを選ぶ。あまり買い物には時間をかけないタイプなので、目に付いた黒くて一般的なフレームの無難なものをチョイス。その後超本格的な視力検査を行い(気球の視力検査を初めて体験した)、度数を決定。人当たりのいい紳士的なおじさんが接客してくれたのだが、「ちょっとこれ、かけてみて。」って言われた仮のメガネをかけてみると、なんとまあ世界が違う。遠くまでハッキリと見え、やや遠くの応対ブースで紙コップのお茶を啜っていた母親の姿もくっきり見えた。

 

すっかり気分を良くし、メガネを購入してもらった。その時にカウンターで「6ヶ月間は無料で度数を変えさせてもらってます。またその時一度来てみてください。」とメガネのキマったおっちゃん店員に言われたのだった(ところでメガネ屋さんの店員ってメガネかけてる人しかいないのですが、伊達メガネも少しはいるんですかね)。

 

時は11月11日。

申し訳程度の受験勉強に勤しんでた時、ふと、ああ、この土日でメガネ屋に行って度数を見てもらうんだった、と思い出した。外に出るのも億劫だな…と思いながらも、この時期にしてはかなり暖かい日曜日の昼過ぎ、すっかり慣れたメガネと保証ハガキ、財布をカバンにぶち込んで、5月に行ったメガネ屋へ愛車(自転車ね)を走らせた。

 

昼下がりはパーカー1枚でも過ごしやすく、よく晴れた秋の高い空には飛行機雲が境界線を描いている。近所は宅地開発が進んでおり、ボロ家と新築のテカテカとした家が混在している。道路脇の温度計は18℃を指していた。うーん、ちょっとしたお出かけにはいい天気だ。

 

見慣れた道を抜け、通りへ出る。この辺りはいくらか店が軒を連ねており、タイヤ屋とかハンバーガ店とかお好み焼き屋(広島っぽい)とかがペカペカと派手な色の看板で誘惑してくる。うるせえうるせえ、今日はてめえらに用はねえんだ。目もくれず自転車を走らせ、ついに目的のメガネ屋へと到着した。

 

が。

 

 


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…ん?

 

はて…???

かいそうちゅう??かいそうちゅうってなんだ???

 

…いや、待て待て落ち着け、こういうことはよくある事だ。店の外装のペンキを塗り替えていて、周りには鉄骨が組んであるが、実は入口は開いている…というのはよくある話だろう。なーんだ、そういうことか。全く、ビビらせやがって…。


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…おろ?

 

ぐらんどおーぷん?ぐらんどおーぷんってなんだ???

待てよ、考えろ、「11月23日(金)グランドオープン」ということは、すなわち「11月23日(金)まではクローズ」という訳で…。

 

………

 

 

はああああああああああああ!?!?!?!

 

俺、その場に膝から崩れ落ちたい衝動に駆られる(オーバーだな)。

なんという事だ…。意気揚々と秋真っ盛りに飛び出してきたというのに…なんでこのタイミングで店内改装工事やってんのよ……。バカじゃないのアナタ!もう!(怒りのあまりカマ口調)

 

秋の高い空から一気に冬のどんよりとした曇り空に叩き落とされた感覚を覚え、自転車をUターンしようとした時、

「ぷぅ~~~ん」

…蚊の羽音でもなければ、オナラのニオイでもないのだが(あたりめえだ)、なんともいい感じな「ぷぅ~~~ん」という匂いが鼻を襲ってきた。それは隣に店を構えるパン屋から匂ってきていた。

このパン屋が構えている場所、駐車場に車が入ってきにくいのか、自分が記憶している中でも三度はオーナーを変えて別のパン屋が店を開いている。そんなに潰れたら、後の店も「そこに店入れるのはやめるべ」となりそうなものではあるが、ここは十数年ほどずーっとパン屋。中身は違うけどずーっとパン屋なのである。パンやらスイーツやら揚げ物やらの軽食たちの市場は、いまやコンビニと呼ばれる巨大勢力が我が物顔で歩く時代ではあり、それも苦戦の要因かもしれないが、それでもパン屋には妙な魅力がある。俺は、折角ここまで出てきたんだし寄っていくか…と自転車を置いて鍵をかけた。

 

そうして見ると、このパン屋の建物、また店名が変わっている。前入っていたパン屋は物腰柔らかそうなパン屋のおじさんのキャラクターが看板にあしらわれていて、店名もひらがなだったのだが、なんだかとてもトレビアーンな看板を構え(どんな看板だ)、外国語のオシャレな店名になっている。

入ってみるとやや狭めの店内には夫婦一組が客としてパンを品定めしていた。トングとバットを取って、こちらもパンを眺めてみた。どうでもいいが、俺はパン屋に来ると必ず塩パンを探す。ご存じですか?塩パン。塩を練りこんだ生地のロールパンで、空洞になっている中にはバターを塗り込んである。それをサクッと焼き上げたシロモノなのだが、シンプルな癖に美味い。結構前から流行りだしたと思うが、これの焼きたては最高に美味いのだ。コンビニでは見かけないイメージだが、作りにくいのだろうか。

この時も塩パンを探したのだが、生憎それに値するパンは見当たらない。まあいい。折角パン屋という名の桃源郷に迷い込んだのだ。一つのパンに固執することもあるまいよ。と思いながらシュガードーナツをバットに取った。

その後、昨日テレビで老夫婦がカレーパンを売っているのを見たのを思い出し、妙に食べたくなったカレーパンを取る。なんで普通のカレーパンって衣つけて揚げるんですかね?美味しくて非常に良いと思うんですけど、なんでそうなったのかと聞かれると、答えられない。

そんなことを考えながら、かぐわしい香りとして主張してきたガーリックバターパンを取る。ガリバタって最強ですよね。ガリバタチキンを考えた人にノーベル賞あげたいぐらいです。

桃源郷のもてなしに視覚と嗅覚で満足し、7、8個パンを購入していた先程の夫婦の後ろに並んだ。全て一つ130円ほど。なるほど、ものによってはやっぱりコンビニより安いかもな、とも思った。

 



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店を出て、秋の空気をいっぱいに吸った。中も外も空気が美味しい。

 

後は帰って味覚で美味しいを感じるか、と、当初の改装ショックも忘れて、自宅に向けて自転車を漕いだ。「俺、何でカバンにぶち込まれて来たんだ?」とメガネが不思議そうにしていたに違いない。